通常の移行と何が違う?WordPressマルチサイト特有の注意点と、失敗しないサーバー移転手順

マルチサイトの移行は「一戸建ての引越し」ではなく「マンション一棟の引越し」

WordPressのサイト移行を経験したことがある方でも、「マルチサイト」の移行は全くの別物と考えた方が良いでしょう。

通常のサイト移行が「一戸建ての引越し」だとすれば、マルチサイトの移行は、多数の住人(サイト)と共有設備(ユーザー情報など)を抱える「マンション一棟の丸ごと引越し」です。

一つのミスが、ネットワークに参加する全てのサイトを巻き込む大惨事につながる可能性があります。

この記事を読めば、マルチサイト移行特有の「罠」をすべて回避できます

この記事は、通常のサイト移行の知識がある方を対象に、マルチサイト移行で「特別に注意すべき点」にフォーカスして解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたは以下のことを明確に理解できます。

  • 通常のWordPressサイトとマルチサイトの、データベースやファイル構造の根本的な違い
  • URLの置換や設定ファイルの編集で、特に注意すべき「罠」とその回避策
  • 複雑なマルチサイト移行を、安全かつ確実に完遂させるための推奨手順

通常移行との最大の違いは「ネットワーク全体」の整合性を保つこと

マルチサイト移行の核心は、たった一つのキーワードに集約されます。

それは「ネットワーク全体の整合性」です。

個々のサイトが正しく表示されることはもちろん、サイト間の関連性や、共有されているユーザー情報、ネットワーク全体の設定などが、新しい環境でも矛盾なく機能するように維持することが、最大のミッションとなります。

データベース構造、設定ファイル、ドメインマッピング…マルチサイトの3つの特殊性

この「整合性」を保つ上で、特に理解しておくべきマルチサイトの特殊性は、以下の3点です。

  1. データベース構造:一部のテーブルを全サイトで共有しつつ、サイトごとに個別のテーブルを持つ複雑な構造。
  2. 設定ファイル:wp-config.phpや.htaccessに、マルチサイトを定義するための特別な記述が追加される。
  3. ドメインマッピング:サブドメインや独自ドメインを各サイトに割り当てるための、DNSレベルでの設定が必要になる場合がある。

以降のセクションで、これらの特殊性が移行作業にどう影響するのかを、具体的に見ていきましょう。

注意点1【データベース】:共有されるユーザーテーブルと、サイトごとの個別テーブル

マルチサイトのデータベースは、通常のサイトとは全く異なる構造をしています。

wp_users と wp_usermetaは全サイトで共有されている

ネットワーク内のどのサイトに登録したユーザーであっても、その情報はwp_usersとwp_usermetaという2つのテーブルに一元管理されます。これは、移行時にこの2つのテーブルのデータを破損させると、ネットワーク上の全サイトの全ユーザー情報が失われることを意味します。

テーブル接頭辞(例: wp_2_posts)に含まれるサイトIDの重要性

投稿や固定ページ、コメントなどのサイト固有の情報は、サイトごとに個別のテーブルで管理されます。これらのテーブル名は、wp_2_posts, wp_3_optionsのように、アンダースコアの後にサイトID(数字)が付与されるのが特徴です。

移行時にこれらのテーブルを漏らしたり、IDとの関連性を壊してしまったりすると、特定のサイトのデータだけがごっそり消えてしまいます。

URLの一括置換で特に注意すべきテーブルとカラム

データベース内のURLを置換する際、特にマルチサイトで注意が必要なテーブルは以下の通りです。

SQL テーブル名注意すべきカラム内容
wp_blogsdomain, path各サイトのドメインとパスを定義する、最重要テーブルの一つ。
wp_sitedomain, pathネットワーク全体のメインサイトのドメインとパスを定義。
wp_#_optionssiteurl, home各サイトのURL設定。サイトID(#)ごとに存在する。

注意点2【設定ファイル】:wp-config.phpと.htaccessの特殊な記述

wp-config.phpに追加されるマルチサイト定義の記述

マルチサイトを有効化すると、wp-config.phpに通常のサイトにはない、以下のような定義が追加されます。これらの記述が、新しいサーバー環境でも正しく機能するかを確認する必要があります。

define( 'WP_ALLOW_MULTISITE', true );
define( 'MULTISITE', true );
define( 'SUBDOMAIN_INSTALL', false ); // サブディレクトリ型かサブドメイン型か
define( 'DOMAIN_CURRENT_SITE', 'example.com' );
define( 'PATH_CURRENT_SITE', '/' );
define( 'SITE_ID_CURRENT_SITE', 1 );
define( 'BLOG_ID_CURRENT_SITE', 1 );

.htaccessに記述される、サブディレクトリ型/サブドメイン型ごとの書き換えルール

.htaccessのリダイレクトルールも、マルチサイト専用のものに書き換わっています。特に、サブディレクトリ型とサブドメイン型では記述が異なるため、移行後も正しいルールが適用されているかを確認することが不可欠です。

注意点3【ファイル構成】:uploadsディレクトリの特殊な構造

uploads/sites/配下にサイトIDごとのフォルダが生成される

通常のサイトでは、メディアファイルは/wp-content/uploads/に年月ごとのフォルダで保存されます。

しかしマルチサイトでは、/wp-content/uploads/sites/というディレクトリの中に、さらにサイトIDごとのフォルダ(例: /2/, /3/)が作成され、その中に各サイトのメディアファイルが格納されます。

ファイルの移行漏れが発生しやすいポイント

この特殊な構造のため、バックアップやファイルの移行時に/sites/ディレクトリを丸ごと移し忘れる、といったミスが発生しがちです。移行後の動作確認では、各サイトの画像が正しく表示されるかを必ずチェックしてください。

注意点4【ドメインマッピング】:サブドメイン/独自ドメイン運用の注意点

サブドメイン型のDNS設定(ワイルドカードDNS)

サブドメイン型(例: site2.example.com)でマルチサイトを運用している場合、新サーバーのDNS設定で「ワイルドカードDNSレコード(*.example.com)」を設定する必要があります。これを忘れると、子サイトが一切表示されません。

独自ドメインマッピングを行っている場合の追加作業

ネットワーク内の各サイトに、全く別のドメイン(例:another-domain.com)を割り当てている場合、その全てのドメインのDNS設定を、新サーバーのIPアドレスに向ける必要があります。ドメインの数が多いほど、この作業は煩雑になり、DNSの浸透期間も考慮する必要があります。

【実践編】マルチサイト移行を失敗しないための推奨手順

これらの注意点を踏まえた上で、安全性を最優先した推奨手順の概要をご紹介します。

  1. Step1:ネットワーク全体の完全なバックアップを取得する:ファイルとデータベース、両方の完全なバックアップを必ず取得します。
  2. Step2:データベース内のドメイン/パス情報を慎重に置換する(WP-CLI推奨):プラグイン(Better Search Replaceなど)でも可能ですが、テーブル構造が複雑なため、可能であればWP-CLIのwp search-replaceコマンドを使うのが最も確実で安全です。
  3. Step3:wp-config.phpと.htaccessを新サーバー環境に合わせて修正する:特にデータベースの接続情報や、サーバーのパスが変わる場合は修正が必要です。
  4. Step4:全サイトの表示と動作を徹底的に確認する:メインサイトだけでなく、ネットワークに参加している全ての子サイトの表示、ログイン、投稿、メディア表示などを一つずつ確認します。

自力でのマルチサイト移行に、少しでも不安を感じた方へ

たった一つのミスが、ネットワーク全体の停止に繋がるリスク

ここまで読んで、マルチサイト移行の複雑さとリスクの大きさを実感されたかもしれません。

データベースのURL置換ミス、設定ファイルの記述ミス、DNS設定の不備…たった一つの見落としが、ネットワークに参加する全てのサイトを巻き込む、大規模なトラブルに発展する可能性があります。

複雑なマルチサイト移行は、専門家にお任せください

私たちWP保守工房は、この記事で解説したような複雑なマルチサイト環境の移行においても、豊富な経験と専門知識を持っています。

お客様の貴重なサイトネットワークを、ビジネスへの影響を最小限に抑えながら、安全かつ確実に新しいサーバー環境へ移転させます。

少しでも不安を感じたら、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。

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まとめ:違いを理解し、慎重な手順を踏めばマルチサイト移行は成功する

WordPressマルチサイトの移行は、確かに高難易度な作業です。

しかし、その核心は「通常サイトとの違い」を正確に理解し、一つ一つの手順を慎重に、そして確実に行うことに尽きます。

この記事で解説した特有の注意点をご理解いただいた上で、万全の準備で移行プロジェクトに臨んでください。

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